油脂が石けんに化ける反応でも書かれているように、石けん分子一つの化学式は図1のようになっています。

図1:石けん分子(脂肪酸ナトリウム)
この分子がたくさん集まったものが一つの石けんです。(この分子が不規則に並んでいると不透明の石けんになり、規則的に並ぶと透明石けんになります。)
ここでは、石けんが汚れを落とすとき、目に見えない分子の世界では何が起こっているか見てみることにします。
手に油がついたとき、水だけで洗ってもほとんど油は落ちませんが、石けんを使って洗うときれいに洗い上がります。これは石けんが界面活性剤だからです。
油と水は本来混ざり合うことはないので、同じ容器に油と水が入っていると油と水は完全に分離し、あいだに境界面が存在します。そこへ石けんが加えられると、石けんが油と水の仲立ちをし、油と水が混ざり合った状態にすることができます。このように油と水のような二つの異なった物質の境界面に存在できるものを界面活性剤といいます。

図2:界面活性作用
界面活性剤というと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩やラウリル硫酸ナトリウムなどの合成洗剤を思い浮かべるかもしれません。
合成洗剤も石けんと同じように油と水の仲立ちをします。二つの異なった物質の境界面に存在できる物は全て界面活性剤と呼ばれますので、合成洗剤も界面活性剤の一つです。天然の界面活性剤と区別するために合成界面活性剤と呼ばれることがあります。
石けんは合成界面活性剤ではないと言われることもありますが、人間の手により化学反応を利用して作られる物なので、石けんも合成界面活性剤であると言えます。ただ、石けんは構造が比較的単純で分解しやすい、濃度の低下や酸により界面活性を失いやすい、人間の歴史の中で他の合成界面活性剤より長く使われてきたなどの特徴が他の合成界面活性剤とは一線を引いていると言えると思います。
天然界面活性剤というと、小豆に含まれるサポニン、卵黄に含まれる卵黄レシチン、大豆に含まれる大豆レシチンなどがあります。
石けんはどうやって、油と水を混ぜているのでしょう。
石けんの分子を機能の面から見ると、図3のように親油基(疎水基)と親水基(疎油基)に分けられます。
親油基は油脂と馴染み、親水基は水と馴染みます。油と水の境界面に存在できるのは、親油基が油とくっつき、親水基が水とくっつくためです。

図3:親油基と親水基
@ 界面活性剤が溶けている水に汚れた布(もしくは肌)を入れると、石けんの親油基が油汚れにくっつき、親水基は水とくっつきます。
A たくさんの界面活性剤が汚れにくっつくと、汚れが付着する力よりも水に引っ張られる力の方が強くなり、汚れの付着している根本に界面活性剤が入り込みます。
根本にも界面活性剤が入り込むことで、汚れが付着する力が更に小さくなります。
B 多くの界面活性剤に取り囲まれ、付着する力より水に引っ張られる力の方が勝り、界面活性剤に包まれた状態で汚れが水中に浮かび上がります。
C 水中に浮かんだ汚れは、小さな汚れに分割されてそれぞれが界面活性剤に包まれ、再付着が妨げられます。
D 水ですすぐと、汚れは界面活性剤と共に洗い流されます。